Love Stories山田 詠美 /鷺沢 萠 /佐藤 正午 /島田 雅彦 /谷村 志穂 /川西 蘭 /川島 誠 /角田 光代
水曜社 刊
発売日 2004-01-24
オススメ度:★★★★
個性が輝いている 2005-06-13
一冊の中に書かれているのは、全部短編恋愛小説なのに書く作家によってこうも印象が違ってくるのだという事に、改めて実感させられる本でした。山田詠美さんのを読みたっかったのがきっかけでしたが、他の方の作品もとても興味深く読ませて頂きました。特に「イアリング」と「チェルノディルカ」が良かったと思います。
山田詠美さんの恋愛小説を読むといつも『きみはペット』というドラマを何となく連想してしまうのですが、この小説の中の「ぼくの味」もまさにそんな感じのお話でした。
角田光代の賞味期限。 2004-07-20
角田さんの小説は昔から読んでいるが、この人はどんどんうまくなっていく。彼岸と此岸のあわいでたたずむ人(普通っぽいが普通でいられず、かと言って突き抜けることもできない人)の姿を描き続けているが、それを語る文章力も構成力も抜群に練れている。この手の小説は下手をすると鼻につく場合があるが、筆力のおかげでその弊を逃れている。
このアンソロジーに入っている「猫男」(単行本初出)も、まさに角田光代的な一編。彼女の小説のあらすじを書こうとすると陳腐になるのでここでは控えるが、主人公の一言だけぜひ紹介したい。
「恋人の強さを、弱さをにくんでいるその強さを、ときとして私もまたにくむ。けれど私が好きになるのは、きまって彼のような男なのだ。自分の食い扶持をきちんと稼いで、身綺麗にして、おいしいものを食べて、労働の合間には休暇を得ることが当然と思い、穴ぼこに足をとられないよう、そのことだけにほとんどの意識を集中させつつも、前を向いて足を踏み出す彼のような男なのだ」
角田光代は、ワインならまさに今が飲みごろ。ぜひ読むべし。でも、5年後はもっとおいしくなっているだろうな。
追悼・鷺沢萠さん。 2004-05-08
自分と同世代の作家である鷺沢萠さんが亡くなった。彼女のデビュー当時からの読者としては、残念のひとことしかない。そして、これからは作品を発表できない鷺沢さんに対して今後自分ができることは、過去に発表された作品を読み続けることしかないと思った。追悼の意味をこめて、初期短編「誰かアイダを探して」が収録されている本書を手にとった。改めて、彼女の才覚を感じた。最近の〈ハートフル〉な話も好きだが、やはり鷺沢萠の真骨頂は初期の〈青春もの〉にあったと思う。きらきらしていて、読みながら胸が痛くなった。もう一度、こういう作品を書いてほしかった。
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