姫君山田 詠美
文藝春秋 刊
発売日 2001-06
オススメ度:★★★★★
???本書は、「MENU」「姫君」など5作品からなる短編集。いずれも、人を愛するということから生じる「聖なる残酷」を正面から見据えている。
???中でも圧倒的な印象を残すのが、独特のバランスで保たれた2人の奇妙な同居生活を描いた表題作「姫君」。「世界のための」源氏名を持つ破天荒な姫子と、ミュージシャンを目指している人のよい摩周。2人の同居生活は、お互いに一線を越えないようにしようという暗黙の了解によって成り立っていた。おもしろいのはここでいう「一線」が、肉体関係のことではなく、もっと観念的な関係性での「一線」であること。だがその関係性も徐々に変化していく。必死に保っていたバランスが崩れ、そこから新しい関係が始まろうとしたときに2人を待ち受けていた思いがけない結末とは…。
???そのほか、他者との複雑で微妙な人間関係を淡々と描きあげた「MENU」や、一風変わった語り手が特徴的な「フィエスタ」など、いずれも人間の関係性に焦点を絞った作品がそろっている。密度の濃い関係が、山田詠美独特の一見軽い口調で展開されていくのだが、内容自体は決して軽いものではない。これまで、肉体関係を中心とした即物的な作品を書く作家という印象を持っていた人は、そのイメージが一変するのではないだろうか。それほど、人と人との関係性が非常に観念的に捉えられており、人を愛することによって生じる、失うことへの恐怖のさまざまな変奏が、せつなく熱く胸に迫ってくる。
???漫画家の真鍋昌平によるカバーイラストも、その都会的な雰囲気が内容にぴったりマッチしていて、ひとつの作品としての完成度をさらに高めている。(盛岡真美子)
「関係」 2005-05-26
この本はまずカバーイラスト(真鍋昌平:画)が成功していると思います。重厚なのにクールで、山田作品独特のエロスも感じられて。
本棚に並べておくとなんとも良い感じで、好きです。
山田作品の凄いところは、こんなハードな恋愛経験ないよ!って人でも、
(もっとも、あったらより共感出来る部分も多いんだろうけど・・・私は生憎無いので:笑)
物語に引きずり込み、共感させる力があること。
それも、夢物語として憧れさせるというのとは少し違って、もっと切なく胸を締め付けられる。精神的な痛みよりはむしろ、肉体的な痛みを伴って。
それはきっと、彼女が「恋愛」というものを通して、人と人とが「関係する」という事の、もっとも深い、芯の部分を描こうとしているからなのだろう、と思います。
そして彼女の紡ぎだす話は、彼女自身がひとつひとつ体得してきたものを、嘘混じりけなくぶつけているから、これほど説得力があり、人の心を動かすのでしょう。
この本は、そんな山田作品の魅力が凝縮されて詰まっていると思います。
これほど多彩な話を描き出しながら、浮つくことなく、クールに、しかも血肉の伴った作品として世に送り出すことが出来る。その圧倒的な力と才能に、感嘆の声を上げずにはいられません。
長編もいいけど… 2005-01-16
いいですよ、これ。
山田さんの本は割とじっくり浸りながら読んだりするのですが、この本はスピーディな感じのものが多く、一気に読みました。
読みながらテンションあがったりします。
響きました。 2004-09-20
泣きました。
山田詠美さんの作品は、とても心に入ってくる。
死をもって愛を知るって、残酷だけど、美しい。
自分が死ぬ時、誰を一番に想うんだろう・・・
充たされて気づかない日常、失って気づく本当に大切なもの。
読んでいろいろ考えてしまいました。
かなりオススメの一冊です。。。
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