風味絶佳
山田 詠美
文藝春秋 刊
発売日 2005-05-15
オススメ度:★★★★
風味絶佳 2009-07-19
この方の本は何冊か読んでいるが、その中ではこれはいまいち。
独特の世界観が少し薄れていて、物語としてはやや平凡な気がした。
男性のために書かれた恋愛小説 2009-06-08
六つの短編からなるこの小説の主人公たちは、 とび職、ごみ収集作業員、ガソリンスタンド店員、 引越し業者、貯水槽清掃員、そして火葬の業務委託員。
ブルーカラーの肉体から醸しだされる体臭に魅了された作者が、 彼らに敬意を払い、とことん愛情を注いで書いたというだけあって、 彼らは、作者の化身である女性たちの小宇宙にあるオアシスに誘われ、 羊水の中にいる胎児のように、愛に満たされる。
ページの端々から滲み出て来るその愛の風味に、私はすっかり魅了され、 これは男性のために書かれた恋愛小説ではないかと思った。(80点)
若い世代は一読を 2009-02-26
人間が醸し出す「風味」をモチーフにした五つの短編集。皆、どこか風変わりなキャラクターが登場する、どこか妙ちきりんな構図ながらも実にシリアスな恋愛物である。
私は特に、主人公のアドレセンスを細やかに描いた、「風味絶佳」と「海の底」に魅惑された。「風味絶佳」のハイカラな祖母、「海の底」のフランクな母の初恋相手。いずれも、実際に自分の身近にいたらかなり窮屈になりそうなのだが、どこか親近感を感じさせ、いとおしい。
全編を通して山田詠美特有の抜群の創作センスが炸裂しているが、私が上記の二作に惹かれたのは、やはり、その瑞々しさ故にだ。彼女の青春文学には、凡百の作家をもってしても描けえぬ、抗い難い刺激と心の琴線に触れる飛沫を感じる。
それに対して、残りの三作が狙いすぎた感が否めなかったのは勿体無い限りである。卓越した絶品が有ろうとも、全体の味わいの濃淡が著しいようではバランスに欠ける。オードブルには是非、メインディッシュ以外にも絶妙な香味の食材を添えて頂きたかった。
さらに詳しい情報はコチラ≫[0回]